平凡な社会人の日記

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完全流体のエネルギー運動量テンソル

本稿の目的: 完全流体のエネルギー運動量テンソルを導出する
本稿の対象: 特殊相対論に触れたことがある人

目標

四元速度 u^\mu で動く完全流体のエネルギー運動量テンソルは次のようになる。
T^{\mu\nu}=\left(\rho+\frac{p}{c^2}\right)u^\mu u^\nu+p \eta^{\mu\nu}
ここで \rho:流体の密度、p:流体の圧力、\eta={\rm diag}(- + + +)である。
これは一般相対論の本でよく見かけるものであり、ゼミでいい導出を見たのでそれを共有する。(多分これが一般的なのかも。)

問題設定

x系で静止している完全流体に対して、四元速度u^\muで動く慣性系から見たエネルギー運動量テンソルを求める。

f:id:physics-heibon:20190510184502j:plain
こういう状況を考える。

静止系で見る完全流体は次の条件を満たす。
エネルギー保存:\frac{\partial(\rho c^2)}{\partial t}=0
運動量保存:\frac{\partial p}{\partial x^i}=0~~(i=1,2,3)
したがって、静止系でのエネルギー運動量テンソルは次のように書ける。
T^{\mu\nu}=\begin{pmatrix}
\rho c^2 & 0 & 0 & 0 \\
0 & p & 0 & 0 \\
0 & 0 & p & 0\\
0 & 0 & 0 & p\\
\end{pmatrix}

別の慣性系でのエネルギー運動量テンソル

静止系でのエネルギー運動量テンソルは次のように書ける。(簡単にチェックできる。)
T^{\mu\nu} =(\rho c^2 +p)\delta^{\mu}_0\delta^\nu_0+p\eta^{\mu\nu}.
後はx^\prime系でのエネルギー運動量テンソルは、Lorenz変換によって求められる。
\begin{eqnarray}
(T^\prime)^{\mu\nu}&=&\Lambda^\mu_\rho\Lambda^\nu_\sigma T^{\rho\sigma}\\
&=&\Lambda^\mu_0\Lambda^\nu_0(\rho c^2+p)+p\eta^{\mu\nu}~~~(\because \eta~はローレンツ不変)\\
&=&(\rho c^2+p)(u^\mu/c)(u^\nu/c)+p\eta^{\mu\nu}
\end{eqnarray}
ここで2行目から3行目は次を用いた。
\begin{eqnarray}
u^\mu&=&\Lambda^\mu_\nu v^\nu=\Lambda^\mu_0c,\\
{\rm ただし、}v^\nu:&=&\frac{{\rm d}x^\nu}{{\rm d}\tau} =\frac{{\rm d}}{{\rm d}\tau}(c\tau,0,0,0)=(c,0,0,0).
\end{eqnarray}

以上で、四元速度 u^\muで動く完全流体のエネルギー運動量テンソル
T^{\mu\nu}=\left(\rho+\frac{p}{c^2}\right)u^\mu u^\nu+p \eta^{\mu\nu}
となることが示された。

コメント

すごい簡単。すごーい。この式は一般相対論の本には必ずと言っていいほど載っているんですが、与えられるだけで導出が書いていない本が多い印象です。私の頭が悪いだけかもしれません。わーい。