曲がった空間での電磁ポテンシャルの運動方程式
本稿の対象者:一般相対論を学んでいる最中の人、一般相対論の計算を覗いて見たい人
本稿の目的:電磁場のラグランジアン密度
に対して、 を力学変数と見たEuler-Lagrange方程式
に先程のラグランジアン密度をぶちこむと次の式になることを導出します。
はじめに
この計算は少し苦労したので(本当は大変苦労しましたが、できてしまうと簡単に思える不思議です。普通に一般相対論を勉強している方ならすぐにできたりするんでしょうかね。)、他の人も苦労しないようにここに書いておきます。センスのある方は、より簡単な方法があればコメントしてください。式変形については丁寧に解説したつもりなので、やったことない人は手で追いながら読んでいただけると幸いです。行間は少し空きますが、手を動かせばできるくらいの行間にしたつもりです。わからないところがあればコメントしてください。
本稿はまず定義や前提知識をまとめておいて、4つのパートに分けて示します。
記法・定義
出てくる文字について説明します。特別な記法はないので、軽く確認します。
は真空の透磁率です。は計量です。
(最後の等式は共変微分の定義から計算できる。とっても大事。) は電磁場テンソルであり、セミコロンはその方向への共変微分です。 で、 は電磁ポテンシャルで は四元電流密度です。さらに はリッチテンソル(の足をあげたやつ)です。
曲がった空間においては、電磁ポテンシャルに対するローレンツ条件は次のように共変微分を用いて書かれることは既知とします。
さらに、は接続係数で、 です。
ステップ1
まずは簡単なやつから始めましょう。ラグランジアン密度の第1項はには陽に依らないので、Euler-Lagrange方程式の第二項は簡単に計算できそうです。
当たり前ですが、計量はに陽に依らないので微分はスルーします。これを本稿のゴールと比較して思うのは、他の項もという因子が掛かりそうだな、と予想できます。これは計算の方針の助けにもなりそうです。
ステップ2
ステップ2では次を示します。
これは電磁場テンソルの足を下におろして、愚直に微分します。(ここはもう少し工夫できそう。)
1つ目の等号は電磁場テンソルの足をおろして計量を微分の外に出しました。2つ目の等号は電磁場テンソルの表式を代入しただけです。「記法・定義」を参照ください。3つ目の等号はライプニッツ則です。4つ目は計量を分配法則してダミーの添字を入れ替えました。後は簡単ですね。ステップ2でした。
ステップ3
ステップ3では次を示します。左辺はEuler-Lagrange方程式の第一項です。
中括弧の中の第一項は本稿のゴールの第一項と同じ式です。もう少しです。がんばりましょう。
1つ目の等号はステップ2を使いました。2つ目の等号はライプニッツ即で展開した後、第一項は次の式を使いました。第二項は偏微分を無理やり共変微分になおしてみました。この方がスッキリしてますね。まあステップ4で展開するんですけどね。
計量の行列式の微分についてはこの記事を御覧ください。
physics-heibon.hatenablog.com
3つ目の等号は、次の関係式を用いました。
これはベクトルの長さが平行移動によって変化しないという性質(平行移動の定義?)から来たものなので、一般的に成り立ちます。「記法・定義」でも書きましたが、 です。残りの項は代入したり足を下げたりしただけです。
4つ目の等号は、ゴールの形になるように足を下げただけです。ここまででステップ3が終わりました。後少しです。がんばりましょう。
ステップ4
後少しと言ったな?あれは嘘だ。
冗談です。あとやることはシンプルで、ステップ1、3で出した式とゴールを見比べると、次を示せばいいことに気が付きます。
これはシンプルで、共変微分を定義通り計算し、ローレンツ条件を使えば終わりです。
1つ目の等号は足を下げただけです。2つ目、3つ目の等号は共変微分の定義通り計算しただけです。4つ目の等号はライプニッツ則です。5つ目の等号では「記法・定義」でも書いたローレンツ条件
を用いました。あとは消える項をズバズバ消すだけです。お疲れ様です。
まとめ
以上のステップ1,2,3,4から、ラグランジアン密度が
のときの、曲がった空間での電磁ポテンシャルの運動方程式
が示せました。
まだ工夫の余地がありそうなので、いい計算方法がありましたら教えてください。また、タイプミスがあれば教えていただければ幸いです。(Twitter: @toshiakisan1127)
Reference: 「相対性理論」佐藤勝彦著
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