物理学ってなに?
物理学って何?
本稿の目的:物理学とはどういう学問なのかを知る
本稿の対象者:物理学に触れたことがない人、高校で物理を習ったが何をやりたいのか分からなかった人(大学で力学などの物理の最初を学んだ方々には退屈な内容かもしれません。)
導入
私の所属は大阪大学理学部物理学科である。学科の名前としては比較的シンプルかつ何をやっているか分かりやすい。その名の通り、物理をやっているのである。しかし一言に物理と言ってもそのカバーする範囲は幅広く、物質の最小の構成単位の世界(素粒子物理学、程度)もいれば、我々と同じようなスケールの物理(物性物理学)もあるし、はたまた銀河全体、宇宙という入れ物に思いを馳せて計算している人達もいる。先日発見された超質量ブラックホール (super massive black-hole)の質量は、太陽の倍程度、周りのガスの温度は℃程度。もうめっちゃ重いしめっちゃアッチッチということしか分からん。
物理学とは何か
さて、非常に多岐にわたる「物理学」とは何者なのだろう。下手の考え休むに似たり、Wikipedia先生に聞いてみよう。「Physics Wiki 」(ちなみに、Wikipediaは英語版の方が丁寧で優しい。難しいと「この記事は難しすぎます。誰か書き換えてください」という注意書きを見るくらい親切。)
Physics is the natural science that studies matters, its motion, and behavior through space and time, and that studies the related entities of energy and force. Physics is one of the most fundamental scientific disciplines, and its main goal is to understand how the universe behaves.
だ、そうです。うーん、最初の方はちょっと古い物理学な気がする。私が大学に入って身につけた物理学とは何かに対する回答としては、「自然を統一的に理解し、自然を制御する」ことである。例を挙げると、星が輝くのは何故か、りんごは落ちるのに月が落ちてこないのは何故か、雨上がりに虹がかかるのは何故か、色とはなにか、我々を構成している最小の構成単位は何か、宇宙に端っこはあるのか、etc. このような問に対して回答を与えようという学問が物理学である。当たり前のように思っていたこの世界も、ふと立ち止まって「常識・当たり前のサングラス」を外してあたりを見渡せば、自然は謎に満ちているのである。これらを数学や論理という武器を持って立ち向かい(ときには論理を飛躍させて)、その根底にある普遍的な原理を見出して、自然を統一的に理解していく。そういう営みが物理学なのだろうと思っている。(答えだと思ったらゴミを掴んでいたことの方が多い。)
物理学の目指すところ
Wikipediaの続きを見てみると、こんなことが書いてある。
Advances in physics often enable advances in new technologies. For example, advances in the understanding of electromagnetism and nuclear physics led directly to the development of new products that have dramatically transformed modern-day society, such as television, computers, domestic appliances, and nuclear weapons; advances in thermodynamics led to the development of industrialization, and advances in mechanics inspired the development of calculus.
書いてある通り、物理学の発展はテクノロジーの発展を促すのだ。ここに「自然を制御する」という物理学の目的の一つがある。(もちろん物理学は自然を理解すること自体も目的とする。)1905年にアインシュタインの光電効果(後にノーベル賞)の発見に端を発した「量子力学」という、小さな世界を記述する物理学の発展は、半導体やMRI (Magnetic Resonance Imaging 病院でゴウンゴウン言いながら体を輪切りにするやつ)へと繋がった。このように、最初は役に立ちそうもない研究から我々の生活に馴染むようになったものは各所に見られる。物理学は自然を理解し、次第に制御して自然を我々の生活に取り入れていくのだ。
物理学は実験科学
はたから見ると、物理と数学は同じように見える。(生物はよくわからない、地学も知らないので物理学に含まれるものとする。)物理も数学も数式を扱っているし、なにやら難しそうなことばかり並べてウンウン唸っている。しかし、物理学と数学には決定論的な違いがあり、それは「物理学は実験科学だ」ということである。つまり物理学における理論の正否は実験によって決定され、実験を説明できないような理論や何か予言してそれが実験にそぐわない場合は、それがどんなにもっともらしくても、その理論は「死ぬ」。(最近も実験精度の向上に伴って有力だと思われていた理論はどんどん死んでいっている。)現在残っている理論(高校で習った力学や熱力学、電磁気学、そして量子力学や相対論なども含めて)というのは、様々な「実験」というふるいにかけられても残った「今のところ正しそうな」理論である。(もちろんコペルニクス的な展開がないわけではないが、まあ今のところほとんどの現象に説明を与えることに成功している。)
まとめ
物理学とは、「自然を統一的に理解し、自然を制御する」営みである。また、その正否は実験によってのみ決定される。
自然は不思議なことで満ち溢れている。ひとたび「なぜ?」と思ったが最後、分からないことはどんどん増えていく。私も分からないことばかりであり、人類も分からないことばかりである。しかし、その一つ一つに対してノロノロとでも正しい理解をしていくと、いつの間にか世の中が輝いて見えるのは、物理学というメガネを手に入れた者だけの特権かもしれない。
余談
より詳しく知りたければ、藤原邦男さんの「物理学序論としての力学」の最初の方に歴史や物理学の考え方が載っていたので、誰でも読める物として面白いです。15分もあれば読めます。相対性理論(特殊)や量子力学に興味があれば、ジョージ・ガモフさんの「不思議宇宙のトムキンス」が読み物としておすすめです。(中古は安いし。)
また、バーチャルYoutuberの宇宙物理たんbotさんがすごくわかりやすく、情熱的に物理の面白さを伝えているのでオススメします。
最後に、このような記事を無知な私が書くのは非常に恐縮なので、コメント等があればおねがいします。
物理学序論としての力学
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